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      思い出の駅(南部)

竹田駅(屏東線・屏東県)

           屏東県は台湾きっての農業県として知られている。この土地を訪れると、車窓いっぱいに広がるサトウキビ畑が旅人を迎えてくれるはずだ。竹田駅はその真ん中にある。

   ここは普通列車だけが停車する小さな駅なので、「駅」というよりは「停車場」といった方がぴったりするかもしれない。列車が出発してしまうと、駅は再び静寂に包み込まれた。

  ここの駅舎は木造平屋の旧来のもので、最近は台湾でもずいぶんと数が減ってしまった。それでも、日本ではほとんど見ることが難しい状態なので、現役として活躍していることを知ると嬉しくなる。

  竹田駅は現在、ホームに隣接する形で設置されたモルタル造りの駅舎での営業が始まっている。六〇年の風雪に耐えてきたこの駅舎も老朽化にだけは耐えることができなかったようだ。歴史記念物として保存される予定もあるとはいうが、老駅舎がこの小さな建物にとってかわられる運命にあるのは、残念ながら、誰の眼にも明らかだ。

  閑静なたたずまいの中で、駅舎をカメラに収めていると、遠くから踏切の音が聞えてきた。次の列車でこの駅に降り立つのは、果たして何人であろうか。

*現在、竹田駅は歴史遺産として保存されることが正式に決まっています。

 

後壁駅(台南県)                   

                明治35年4月20日に開業したというこの駅は、木造平屋の懐かしい建物が今も現役で活躍している。日本では見ることも少なくなった懐かしい地方駅のスタイルである。

 開業当時、この駅は「後壁寮(こうへきりょう)」を名乗っていた。当時から南部随一という規模を誇った関仔嶺温泉への下車駅として知られており、小さな賑わいを見せていたらしい。戦前、発行された鉄道旅行案内を見ても、必ず、ここ

の駅名が関仔嶺温泉への下車駅として記されている。

 現在、関仔嶺温泉へは、嘉義からアクセスするのが一般的で、この駅を利用する人は多くない。それでも、温泉の玄関口として賑わったこの駅舎には、ささやかながらも、堂々とした風格が感じられる。往年の様子が目に浮んできた。

    

嘉義駅(嘉義市)                   

   嘉義は熱帯台湾の玄関口とも言える町だ。市の南側を北回帰線が通り、植生もここから南は明らかに熱帯性へと変化する。現在の人口は約30万。高雄、台南に次ぐ南部の中枢都市でもある。さらに、阿里山観光や関子嶺温泉などへのゲートとしてもよく知られている。

    この駅の歴史は古い。1902(明治35)年4月20日に開業を見たこの駅は、当初から多くの利用客で賑わっていたという。阿里山から運び込まれた木材や平野部で栽培されていたサトウキビがここに集積され、媽祖信仰の中心とも言える北港への起点としても機能していていた。多くの人々がここに降り立ち、そして、次の目的地へ向かっていく。文字通りのターミナルだったのである。    

 現在の駅舎が建てられたのは1933(昭和8)年6月20日。無駄を廃した極めてシンプルなデザインではあるが、欧風の雰囲気を随所に感じられる外観だ。この時代、台湾の建築界もすでにモダニズムの時代 を迎えており、鉄筋コンクリート造りが主流になっていた。構内に足を踏み入れると、規則正しく並んだ採光窓から陽が差し込んで独特な造詣を織りなしている。大きくて天井の高い待合室も印象的だ。    

 さて、嘉義名物の一つに鶏肉飯がある。七面鳥の肉をスライスして、たれとともにご飯にのせたシンプルな屋台料理だが、これが他の地域ではなかなか出せない独特の風味を誇っている。市内を散策していても、鶏肉飯の看板を掲げた専門店の数は少なくない。途中下車をしてでも味わいたい地方の味覚である。                 

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